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映画愛の現在 三部作

映画監督:佐々木友輔

『映画愛の現在 第Ⅰ部/壁の向こうで』(103分/2020)日本語
『映画愛の現在 第Ⅱ部/旅の道づれ』(103分/2020)日本語
『映画愛の現在 第Ⅲ部/星を蒐める』(107分/2020)日本語

Filmmaker: Yusuke Sasaki

“Cinephilia Now: Part I – Secrets within walls” (2020 / 103 min) Japanese
“Cinephilia Now: Part Ⅱ – Fellowship to cast the ring” (2020 /103 min) Japanese
“Cinephilia Now: Part Ⅲ – Lux crawler i++” (2020 / 107 min) Japanese

Cinephilia
Cinephilia

作品解説

鳥取県にもかつては多くの映画館が存在したものの、今や三館が現存するのみである。そのような環境下で、自分たちが見たい映画を見るべく、県内各地で独自に上映活動を継続し、豊かな文化を築いてきた人々へのインタビューから構成されるドキュメンタリー映画三部作。
「映画はどこにあるのか」。映画館でしか存在できないのだろうか。監督や配給会社だけのものだろうか。「上映」という営みから世界を覗けば、上映を支える様々な要素の一つとして、「映画」も相対化され違って見えてくる。

第Ⅰ部
鳥取県東部。主に鳥取市内の上映スペースで、それぞれが上映活動を立ち上げるまでの過程を丹念に聴き取り、他に代え難い「上映」体験が生まれるための、様々なヒントが語られていく。

第Ⅱ部
鳥取県中部。ここでは映画制作を通じて上映に携わる人々が多く登場する。彼/彼女らの映画の制作スタイルは、監督が頂点に君臨して作られるものではなく、協働によって生まれてくるものとして語られる。やがて監督自身も制作を通じた映画との関わりを問い直すことになる。

第Ⅲ部
鳥取県西部。ここでは舞台となる上映スペースも山中の温泉施設に併設されていたり、国道沿いの居抜きスペースであったり、主に車の移動によって点在する場所を訪ねて回る。しかし、それぞれのコミュニティはお互いに映像祭などを通した交流でつながっており、点は線となる。

『映画愛の現在』は、もちろん登場する人々のインタビューを中心にしたドキュメンタリー映画なのだが、彼/彼女らの語りに活き活きとした具体性を与えているのは鳥取の風景を東から西へと横断するロードムービーとしての側面である。作品内での移動はファンタジーの要素を出来る限り排し、舞台となる上映会場から、次の上映会場への道のりを丹念に辿っており、その移動手段も短距離なら徒歩、長距離なら電車、どちらも難しければ車といったように、その速度感や距離感すら再現されているようだ。
この忠実な空間の移動時に写り込んだ映像から、例えば鳥取市(第Ⅰ部)と米子市(第Ⅲ部)では、それぞれの街の造りが全く異なっており、単なる「地方都市」という言葉で同列には括れないのではないか、と想像することができる。自然と上映にまつわる様々な条件も異なってくるだろう。場合によっては、中心にあったはずの「映画」や「上映」という営みすら背景に退き、鳥取という土地そのものが前景として浮かび上がってくるのだ。

Profile

佐々木友輔(ささき・ゆうすけ)
1985年兵庫県神戸市生まれ。映像作家・企画者。鳥取大学地域学部准教授。映画・ドキュメンタリー制作を中心に、執筆・出版、展覧会企画など領域を横断した活動を続けている。近年の主な上映に、第50回ロッテルダム国際映画祭(『映画愛の現在 第Ⅰ部/壁の向こうで』)、第13回恵比寿映像祭(『映画愛の現在』三部作)、jig theaterでの『コールヒストリー』上映などがある。