
『7 x 7』49min, 2004
解説
池田作品にはその時を記録しようという強い意志が感じられる。
『7 x 7』の日記的な映像記録しかり、『3PORTRAITS & JUNE NIGHT』の栃木県益子の2009年の状況と震災後の状況しかり、『《埋没する3つのbluesに捧げるcondensed music》ビデオドキュメント』の譜面を記録することというある種の無理難題しかり。
「その時」と書いたのは、池田泰教が記録しようとしていることは、“現実”でもなく、“状況”でもない。ましてや“情景”や“景色”のような甘いものでもない。池田の眼は冷徹にその時を見つめているように見える。
しかし、長方形の映像に残す以上、そこには記録者の視座が介在する。池田の視座はどこまでも映画的で、今回は上映しないが『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW A Quiet Day』の兄を追ったトラッキングショットや、『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW Hanging in mid-air』『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW Ghosts』の微動だにしないフレーミングとモチーフの据え方には、強固な映画作家による画面だ。
池田は記録という言葉には懐疑的であると言う。だからあえて自分は「記述」というのだと言う。「池田泰教はその時を記述している」。これからもまだまだ池田作品を観続けたいからこそ、今2010年頃の池田作品を観ておきたい。

『《埋没する3つのbluesに捧げるcondensed music》ビデオドキュメント』28min, 2012

Profile
池田泰教(いけだ やすのり)
1976年福島生まれ。映像作家。
時間の構造が生み出す面白さに着目し、独自の記述法を用いたドキュメンタリー/フィクションを制作。人物のポートレイトを映像で描く『3Portraits and JUNE NIGHT 』(2009-2014)、49日間のドキュメンタリー作品『7×7』(2004/SOLCHORD)、エリアを指定し即興的に演出した『MOSAIC 』(2001/Internationale Kurzfilmtage Oberhausen)など、撮影行為を起点にしたナラティブな表現を探求し発表を続けている。