vol.4,上映作品

ウッチ映画大学短編作品セレクションⅠ

作家:ウッチ映画大学 (ジェレミ・スクロツキ、ダリア・カスぺレグ&ミハエル・モドリンガー、クラウディア・フォルガ、ヤクブ・ブリサグ)

(4作品/61分)ポーランド語 ※英語字幕のみ

Filmmaker: The Film School in Lodz (Jeremi Skrodzki, Daria Kasperek & Michał Modlinger, Klaudia Folga, Jakub Prysak)

Length : 61 minutes (4 Films)


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①『 The Hive』(2018/9min.) ジェレミ・スクロツキ
ポーランドでは伝統的に余暇は自然を楽しむことを尊ぶとされ、首都ワルシャワの中心部であっても集合住宅に住む人向けに、「ジャウカ」と呼ばれる園芸用の広大な緑地が点在している。利用者は老人が多く、そこに集まってきては社会主義時代を懐かしんだり、最近増えてきた移民との生活様式の違いに不平をもらしたりしている。
35mフィルムで撮られた美しい画質と巧みなフレーミングによって画面にはポーランドの自然の風景が再現され、急速に成長する首都の風景と対比される。

②『 The Edge of Town』(2019/15min.) ダリア・カスぺレグ&ミハエル・モドリンガー
「街のはずれ」というタイトルの通り、いかにもロードサイドとでもいう道を脇に外れていく大型犬を連れた女性。カメラはゆっくりと滑らかにそれを追っていき、この場所へ集う独特な人々の姿もぽつりぽつりとフレームインしては消えていく。全編に謎めいた不穏な気配を漂わせることで、登場人物や撮影地についての想像を観客に掻き立てさせる映像である。

③『The Turtle Cave』(2019/21min.) クラウディア・フォルガ
主人公のハニアが幼少時代を回想する形式で、ある家族の団地での生活が描かれる。ハニアの母親は精神的に体調を崩しているらしく言動が不安定で、同じことを繰り返し家族に話しかけたり会話がかみ合っていない。どうやら父の不倫が原因の一つでもあるようだ。兄は家族に無関心で好き勝手に遊んでいる。主人公は母親に甘えたい素振りを何度も見せ仮病などを使うようになるが……。
高度経済成長の最中で若者の人口比率も高いポーランドでは、住宅が充分ではなくそれを解消するために続々とマンションが建設されている。こうした状況下で生じた歪みを主人公の家族は体現しているのだろうか。過酷な家庭環境という設定だが、演出は坦々としていて、それが却ってオフビートな空気感を作り出している。作り物のような集合住宅のビジュアルもそれに拍車をかける。

④ 『A Tale of Two Sisters』(2019/16min.) ヤクブ・ブリサグ
古いアパートの隣同士に二人の老婦人が住んでいる。日中、二入はどちらかの家に集まり、テレビやカードゲームに興じている。一見とても仲が良さそうだが、政治的な話がテレビから流れてくると雲行きが怪しくなる。一人は非常に敬虔なカトリック教徒で現在のポーランドの伝統を軽んじる雰囲気に不満を持っていて、もう一人は社会主義体制崩壊・EU加盟以降の自由な空気を享受していて、それぞれに信条が異なるのだ。
右派ポピュリズム政党「法と正義」が政権を奪取して以降、ポーランドはいわゆる「西側」との対立を深めている。どのような国家の姿を望むのかという選択は、この映画が設定したシンプルな二項対立構図ほど単純にはいかない。実際のところ非常に仲睦まじくもある二人の関係を始め、映像の細部がその構図を裏切っているのだ。

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ウッチ映画大学