作品解説
本作品は、携帯のテキストだけで表現された、20時~23時ぐらいまでの夜寝る前の高校生の心情を舞台にした74分の物語映画である。2002年11月1日(金)テスト前日の夜、高校生だった私はどんな時間を送っていたかと問うてみる。そういえばあの当時土曜日の午前中まで授業があったかもしれないことを思い出していた。あの日の夜、一番仲の良かった友達と、もしかしたら決裂してしまったかもしれない。
冒頭、学校からの友達との帰り道、分かれ際に、「バイバイ」と何度も言葉をかけるカメラには映らない人物の声。その次のショットでは、携帯のメールを見る人物のモノクロの超ロングショットが続く。この映画の中に出てくるメールのやりとりが、架空の演出なのか、ドキュメンタリーなのかわからないが、そのことよりも、2002年当時、友達と携帯を使ってショートメッセージを延々と送り合うことは、青春時代の1ページとして同時代を生きた人間ならば誰でも理解できる事柄だと思う。あの頃、友達からの連絡が待ち遠しく、携帯の着メロが誰かからの呼び出しで鳴ることをいつも待ちわびていた。
映画作家佐々木 友輔が10代後半で制作し、メージフォーラム・フェスティバル2003一般公募部門大賞を受賞したデビュー作。(鈴木)
Profile
佐々木友輔(ささき・ゆうすけ)
1985年兵庫県神戸市生まれ。映像作家・企画者。鳥取大学地域学部准教授。映画・ドキュメンタリー制作を中心に、執筆・出版、展覧会企画など領域を横断した活動を続けている。近年の主な上映に、第50回ロッテルダム国際映画祭(『映画愛の現在 第Ⅰ部/壁の向こうで』)、第13回恵比寿映像祭(『映画愛の現在』三部作)、jig theaterでの『コールヒストリー』上映などがある。