vol.4,上映作品

斎藤玲児作品特集

作家:斎藤玲児

(135分/2009-2022)日本語

Filmmaker: Reiji Saito

Year of production : 2009-2022 Length : 135 minutes


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上映作品

第一部
『9』 (2009/4min.)
『10』 (2009/3min.)
『11』 (2010/4min.)
『dog & video』 (2014/4min)
『19』 (2017/7min.)
『13』(2013/5min)

第二部
『16-2』 (2013/3min.)
『17-2』 (2015/13min.)
『18-6』 (2017/19min.)
『20』 (2017/14min.)

休憩

第三部
『24-2』 (2021/25min.)
『25-2』 (2022/32min.)


斎藤玲児の映像作品には、制作された順に数字によるタイトルが付され、もし制作後に同作品を再編集した場合は『17-2』、『18-6』のように末尾に更に数字が付されてバージョンが更新される。大学在学中の2008年頃から制作が開始され、卒業後約3年ほど中断するものの、その後はギャラリーでの展示という形式を中心にコンスタントに新作が発表され続け、2022年4月現在で作品は『25-2』まで制作された。

斎藤の映像作品を特徴づけるものを言葉でいくつか列挙してみる。非フォトジェニックな日常の一幕の細部。それを助長するかのようなハンディカム特有の画質の粗さ(今ではめっきり目にすることが少なくなった)。デジタルズームによる極端なクローズアップ。非物語的・非構造的で生き物が蠢くかのような不規則な編集リズム。撮影中に生じたホワイトノイズやクリック音などの音を使って作られたと思われる独特の音響(無音もしばしば挿まれる)。近作に見られるカメラの手振れやオートフォーカス、レンズフレアを利用した長回しが生み出す劇的な効果。等々……。

しかし特徴を記述するだけではかえって危うさを孕む。個別の作品ごとに生じた鑑賞体験が斎藤作品の「それ」として漠然と共有され均質化してしまわないだろうか。今回上映する中で最も古い『9』(2009)と、最新作の『25-2』(2022)を比較すれば、その作風が変質しているのは明らかであるにもかかわらず、だ。例えば展示形式では気付きにくいかもしれないが、あの音響の有無によって鑑賞者に生じる変化とは何だろうか。上述した特徴のどれか一つでも欠けたり追加したりした場合に彼の作品らしさの何が失われるのか(あるいは助長されるのか)。その差異とは、取るに足りないようなとても微かなものかもしれないが、〈カメラ―映像〉というメディアはそのような差異すら記録することが可能なのであり、斎藤自身の興味も、映像がただ存在するだけで自立してしまうかのような現象にこそあるのではないか。

十数年にわたる制作の軌跡を辿ることで、私たちもその微妙な差異についての新しい言葉を準備できないだろうか。

Profile

斎藤玲児
1987年東京都生まれ。武蔵野美術大学油絵学科卒業。日々の生活の中で撮りためられた大量の写真と動画を元に、2008年から映像作品を制作し続けている。東京を拠点に国内外で作品を発表。主な展覧会に「And again {I wait for collision}」(KINGS / メルボルン / 2019)「5月」(以外スタジオ / 東京 / 2019)「鈴木光 / 斎藤玲児 映像上映」(KAYOKOYUKI / 東京 / 2017)「もうひとつの選択 Alternative Choice」(横浜市民ギャラリーあざみ野 / 神奈川 / 2015)「#18-4」( switch point / 東京 / 2016)「24」(LAVENDER OPENER CHAIR / 東京 / 2020)「25」(武蔵野美術大学 2 号館 1F gFAL / 東京 / 2021)