,

Blessed ―祝福―

監督:崟利子

(78分/2001年)

Filmmaker : Toshiko Takashi

Year of production : 2001 Country : Japan Length : 78 minutes


作品解説

大阪、西天下茶屋の路地にある古い木造アパート「おおいし荘」。監督の崟は幼少時、ここで家族3人暮らしていたのだという。30年ぶりにおおいし荘を訪れると、そこには当時からの住人である春子さんとすみ子さんという女性が未だに二人だけで暮らしており、監督をアパートに招き入れる。3年後、ストリップ劇場での舞台のために大阪を訪れたダンサーの女性とともに再びおおいし荘を訪れたものの、アパートには誰もいなくなっていた。監督は彼女たちの行方を気にかける。
劇中、詩的な響きを持ったテキストが朗読される。朗読によく耳を傾けていくと、これはダンサーの女性が、親密な関係が示唆される監督の崟に宛てて打ち明けた、撮影時に見た情景や心情を繊細な表現で読み上げているものだということが次第に明らかとなる。

慌てて回し始めたかのような揺れを伴うカメラワークや、当時のビデオカメラの粗い画質にもかかわらず、まるで非常に壊れやすいものをすくいあげるかのような何者かへの配慮が作品全体を通して感じられる。
いわゆる見世物として、「見る/見られる」という非対称でグロテスクな関係が生じやすいストリップ・ショーのシーンであっても、監督へ向けられたテキストの朗読と映像があいまって、一方的に見ることのできる立場に置かれた私たち観客の足元を突き崩す。
撮影者と被写体、手紙の差出人と受取人、おおいし荘の二人の女性。様々な要素が合わせ鏡のように反射し合って、監督の過去への眼差しと思われた西天下茶屋の路地の風景は、やがて未来をも投射するかのようだ。

崟利子監督の代表作であり、2001年山形国際ドキュメンタリー映画祭、2002年ニヨン国際映画祭出品された。

Profile

崟利子 | Toshiko Takashi

大阪生まれ。福田克彦監督の助監督、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭のディレクター等を経て、『オードI』『西天下茶屋・おおいし荘』を制作(1998、山形国際ドキュ メンタリー映画祭1999)。『Blessed ─祝福─ 』(2001、山形国際ドキュメンタリー映画祭2001)は、ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞受賞。 2005年より東京茅場町のギャラリーマキにて新作発表上映会「季刊タカシ」、2009年から神戸映画資料館で「タカシ時間」を開催している。 近作に、『Wave 踊る人』(2016、恵比寿映像祭 2017)『BETWEEN YESTERDAY& TOMORROW Omnibus2011/2016/2021』(2021、 山形国際ドキュメンタリー映画祭2021)。