①『How To Swim And Not To Drown』 (2019/22min.) アンナ・パウルチュク
ポーランドの北東部の端に位置する街アウグストゥフのネッタ川では、毎年「浮けばなんだっていい」という名前の、面白可笑しい手造り船の出来栄えを競う大会が開催される。アーノルドという老人は、家族と共に何十年もこの大会に全力を注ぎ、家は謎の工具や部品であふれ返る。
社会主義時代に使われていた父のガラクタを新たに復活させるとも述べる、彼の創作への情熱は、単なる奇抜さだけでなく意図的な時代錯誤なのかもしれない。
②『Blow』(2020/21min.) ロバート・クウィルマン
同じボクシングジムに通うマテウシュとエワは恋愛関係を結んだばかり。マテウシュはエワの男性経験と恋愛観に気後れしているようで、二人のやり取りはしだいにギクシャクしたものになる。マテウシュはボクシングのコーチである年上の女性にその悩みを聞いて欲しいと家へ向かう。
いたってシンプルなストーリーを、古典的な風格さえある確かな演出で描く恋愛劇。ボクシングのスパーリングなどを利用し、男女の肉体が、近づいたり離れたり、切り替えしで交互に写される画面はとても美しい。歴史あるウッチ映画大学の風格を感じさせる作品。
③『Hide And Seek in a Peaceful Valley』(2020/14min.) マチェイ・ビャロルスキ
ガザ地区から数kmの距離にある、イスラエルのドロット・キブツという居住地区はフェンスで囲われており、度々ミサイル攻撃への警戒を知らせるサイレンが鳴る。そのような場所で育つ少年たちが夢中で遊ぶ姿をカメラは捉える。彼らの遊びは、どこかこうした環境から影響を受けているようにも見えてしまう。
古くからポーランドにはユダヤ人が居住しているが、16世紀ごろからその流入は本格的に増加して独自のコミュニティを築いた。また第二次世界大戦時のポーランド内に建設されたアウシュビッツと、それにまつわる想像を絶する歴史も周知のとおりである。ガザ地区の人々のことを想いながらイスラエルで撮影され、ポーランドで作られたこの作品を、私たちはどのように鑑賞できるだろうか。
④ 『Quiet Now』(2020/21min.) カタルジーナ・ウィシュニフスカ
世界遺産であるボフニャ王立岩塩抗は13世紀に発見され、ポーランドの王国に莫大な富をもたらした歴史があり、坑内には壮麗な祭壇もあり、岩塩で彫られた宗教画や、呼吸器疾患のためのサナトリウムまである。ここに勤める主人公は、ある日聾者の子どもたちの団体を案内することになるが、いつもと勝手が違うこともあり、ちょっとした失敗や苛立ちを子どもたちに見せてしまう。子どもたちの中に一人、特に何度も主人公をからかう少女がいた……。
どこかスピリチュアルなものへの傾倒が感じられる主人公と、いたずら好きな少女とのコミュニケーションは、岩塩坑内を突き進んでいくにつれて次第に神秘的なものに見えてくると同時に、観客を惹きつける。
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ウッチ映画大学